残価設定ローン(残クレ)のデメリットは?仕組みや向き不向きを解説

写真はイメージです
残価設定ローンは、車を分割払いで購入するときの支払い方法の1つです。毎月の支払額を抑えられるといったメリットがある一方、デメリットもあります。残価設定ローンの利用を検討する際は、デメリットについても理解しておくことが大切です。
今回は、残価設定ローンを利用するデメリットとともに、メリットや利用が向いているケース、向いていないケースをご紹介します。残価設定ローンと通常の分割払いの毎月の支払額についても比較していますので、ぜひ参考にしてください。

<この記事の要点>

  • 残価設定ローンを利用する主なデメリットは、「金利の負担が大きくなる場合がある」「車の使用に制限がある」「車を乗り換える際に制限がある」こと
  • 残価設定ローンを利用する主なメリットは、「毎月の支払額を抑えられる」「数年ごとに新車に乗り換えられる」「あらかじめ設定した残価は保証される」こと
  • 「車乗り換え時の手間が面倒」「ライフスタイルの変化に合わせて車を乗り換えたい」と考えている方には、残価設定ローンが向いている

残価設定ローン(残クレ)とは、車両本体価格の一部を除いた金額を支払う自動車ローンのこと

残価設定ローンとは、あらかじめ車両本体価格の一部(契約期間後の車の価値分)を最終回の支払い分として据え置くことにより、最終回を除く月々の支払額を軽減できる自動車クレジット(以下、自動車ローンと記載)のことです。
下図のように、最終回の支払い分(1)を据え置き、最終回を除く総額(2)を分割して支払います。
■残価設定ローンのイメージ
残価設定ローンのイメージ図
車両本体価格の一部が据え置かれていることから、総支払額を分割する「通常の分割払い」と比べて、毎月の支払額を抑えられる点が特徴です。最終回の支払いプランは、「新車への乗り換え」「車の返却」「車の買い上げ」のいずれかから選べます。
「最終回の支払いプラン」について詳しくは、下記をご覧ください。

残価設定ローン(残クレ)を利用するデメリット

残価設定ローンを利用する場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。想定されるデメリットは、下記のとおりです。

金利(分割払手数料)の負担が大きくなることがある

残価設定ローンは、毎月の支払額を抑えられる一方、金利(分割払手数料)の負担が大きくなることがある点がデメリットといえます。残価を据え置くことで毎月の支払額を抑えられますが、据え置いた残価にも金利(分割払手数料)がかかっています。
そのため、結果的に通常の分割払いよりも金利(分割払手数料)の負担が増えてしまうケースが少なくありません。
ただし、最終回の支払い時に「新車への乗り換え」や「車の返却」を選択することで、残価の支払いが発生しないため、通常の分割払いよりも支払総額を抑えられるでしょう。なお、車の状態が規定に合っていない場合は、別途精算金が発生する可能性があります。

車の使用に制限がある

残価設定ローンのデメリットには、販売店によって定められた規定の範囲内で車を使用しなければならない点が挙げられます。
残価設定ローンを利用した場合、車の所有者は車の販売店となるため、一般的に走行距離や車のカスタマイズに制限が設けられているケースがほとんどです。
ただし、販売店によって異なるものの、エアロやアルミホイール、マフラーなどの一般的なカスタマイズであれば、問題ないことが多くあります。車の使用に制限があるとはいえ、購入時の状態から一切手を加えられないというわけではありません。
なお、カスタムの制限は、ほかの支払い方法でも制約される場合があるため、残価設定ローンに限ったデメリットではありません。

車を乗り換える際に制限がある

最終回の支払い方法で「新車への乗り換え」を選択した場合、同じメーカーの中から次の車を選ぶ必要があるため、人によってはデメリットとなります。
異なるメーカーの車に乗り換えたい場合には、車を返却するか買い上げなければなりません。
ただし、特定のメーカーにこだわりがある方や、反対にメーカーが限られていても差し支えないと感じる方にとっては、大きなデメリットにはならないでしょう。

残価設定ローン(残クレ)のメリット

残価設定ローンの利用にはデメリットがある一方で、メリットも多くあります。ここでは、残価設定ローンを利用するメリットを見ていきましょう。

毎月の支払額を抑えられる

残価設定ローンを利用するメリットの1つは、毎月の支払額を抑えられることです。
車両本体価格から残価として設定する分を除いた金額を分割払いするため、通常の分割払いでは手の届かない車に乗れる可能性もあるでしょう。

数年ごとに新車に乗り換えられる

残価設定ローンでは、最終回の支払い時に「新車への乗り換え」を選択すれば、基本的に据え置いた金額の支払いをせずに新車に乗り換えられます。そのため、通常の分割払いよりもコストや手間をかけずに数年ごとに新車への乗り換えが可能です。
定期的に新しい車へと乗り換えたい方にとって、大きなメリットといえるでしょう。

あらかじめ設定した残価は保証される

最終回に据え置いた分の残価は、中古車市場の動向などに影響されず、保証されます。
例えば、車の返却時に車の価値が大きく下がっていたとしても、あらかじめ設定した残価には影響しません。中古車市場の動向は予測が難しいため、設定した残価が保証され、返却時に影響を与えない点は、残価設定ローンのメリットといえます。
  • 車両状態が事前に定めた規定外である場合を除きます。

残価設定ローン(残クレ)の利用が向いている方

残価設定ローンは、どのような方に向いている自動車ローンなのでしょうか。残価設定ローンの利用が向いていると考えられる方の特徴をご紹介します。

毎月の負担を抑えて車に乗りたい

残価設定ローンは、通常の分割払いと比べて毎月の支払額を抑えられるため、余裕をもって生活したい方や、車だけでなく趣味などにもお金を使いたいと考えている方に向いています。
新車に乗りたいものの、車にかける毎月の負担をできるだけ抑えたいという方におすすめです。

定期的に新車に乗り換えたい

残価設定ローンは、同じ車に長年乗り続けるよりも、定期的に新車に乗り換えたいという方にも向いています。
最終回の支払い時に再び残価設定ローンを組むことにより、最終回の支払いをせずに新車に乗り換えられるため、車が好きな方や、定期的に最新モデルの車に乗り換えたいと考えている方におすすめです。
例えば、3年ごとに車を乗り換えたとき、現金購入の場合は車両本体価格を全額支払うため、まとまった資金が必要です。また、2台目の購入時に下取りを利用できるものの、市場の動向によっては想定よりも下取額が低くなり、乗り換え時の負担が大きくなることがあります。
残価設定ローンの場合、頭金の支払いと毎月の支払いはあるものの、乗り換え時のまとまった出費は抑えられます。乗り換え時の負担を軽くして、定期的に車を乗り換えたい方には、残価設定ローンが適しているでしょう。
残価設定ローンを利用して3年ごとに車を乗り換えた場合について、現金購入との差額のイメージは下記のとおりです。
■残価設定ローンの利用時と現金購入の差額のイメージ
残価設定型クレジット(3年ごとに買い替え)の場合 イメージ図
「3年ごとに新車に乗り換えるときのシミュレーション」について詳しくは、下記をご覧ください。
車は何年で乗り換える?3年ごとに新車に買い換えて維持費を節約!

車の乗り換え時の手間が面倒だと感じる

新しい車に乗り換える際の手続きや、比較検討などが手間だと感じる方にも、残価設定ローンが向いています。
通常の分割払いで車を購入して乗り換える場合、複数の車買取業者の見積りを比較したり、下取りと売却どちらがお得になるかを検討したりする手間がかかります。車を手放す手続きと新しい車を購入する手続きをスムーズに行うことは難しいでしょう。
しかし、残価設定ローンであれば、ひとつの販売店で車の返却、新しい車の注文手続き、残価設定ローンの審査や契約手続きが行えるため、手間がかかりません。できるだけ手間をかけずに新車に乗り換えたい方におすすめです。

ライフスタイルの変化に合わせて車を乗り換えたい

残価設定ローンは、ライフスタイルの変化に合わせて、柔軟に車を乗り換えたいと考えている方にも適しています。
結婚や出産に伴って家族が増えたり、転勤・転職などによって車を使用する頻度が変わったりすることもあるでしょう。ライフスタイルに合わせて乗車定員や排気量などを柔軟に選択できれば、ガソリン代や保険料などの維持費を合理的に調整しやすくなります。数年ごとに車の乗り換えがしやすい残価設定ローンなら、その時々に合った車を選択できるのです。

残価設定ローン(残クレ)の利用が向いていない方

残価設定ローンは、長距離運転をする頻度が高い方には、向いていない可能性があります。
一般的に残価設定ローンには、走行距離制限が設けられています。日常的に長距離運転をする場合、定められた走行距離を超えてしまうことも考えられるためです。
通勤に車を使用することを想定しており、自宅から勤務先まで距離があるような場合は、毎月の走行距離をあらかじめ試算しておくことをおすすめします。また、旅行やレジャーなどで遠方に出掛ける頻度が高い方も、定められた走行距離をオーバーしないか検討が必要です。
残価設定ローンの利用を検討する際は、車の使用頻度や想定される走行距離などを考える必要があります。

残価設定ローン(残クレ)と通常の分割払いの比較

残価設定ローンと通常の分割払いを比較した場合、毎月の支払額や支払総額などは、どのような違いがあるのでしょうか。車両本体価格が約200万円の車を購入した場合を想定して、両者を比較してみましょう。
■残価設定ローンと通常の分割払いを比較したときの支払いイメージ
残価設定ローン 通常の分割払い
車両本体価格
(現金販売価格)
2,008,000円 2,008,000円
頭金 100,000円 100,000円
割賦元金 1,908,000円 1,908,000円
最終回お支払い時の残価率 26% -
月々のお支払い 初回:14,442円 初回:18,769円
月々:9,900円(48回) 月々:17,500円(49回)
ボーナス:150,000円
(6月・12月/10回)
ボーナス:150,000円
(6月・12月/10回)
最終回のお支払い 522,080円 -
支払総額 2,231,522円 2,243,769円
実質年率 5.0% 6.0%
  • 掲載の価格には、保険料、税金(消費税を除く)、自動車リサイクル料金、その他登録等に伴う費用等は含まれておりません。割賦元金に税金・諸費用は含まれておりません。
  • 残価設定ローンの場合、最終回のお支払いは不要ですが、車両状態が事前に定めた規定外である場合には、別途精算金を支払う場合があります。
  • 最終回で買い上げ(一括精算・再度分割支払い(再クレジット払い))を選択した場合、最終回のお支払い金額(残価)を含めた支払い合計金額は、通常の分割払いのほうが軽くなる場合があります。買い上げの際に再度自動車ローンを契約する方法もありますが、別途条件があります。詳しくは、販売店へ確認が必要です。
車両本体価格が同じ車を購入した場合、通常の分割払いよりも残価設定ローンのほうが毎月の支払額を抑えられることがわかります。
また、残価設定ローンの支払総額には最終回の支払額も含まれています。最終回の支払額は、車を買い上げる場合を除き負担する必要はありません。

毎月の支払額を抑えたいなら残価設定ローン(残クレ)がおすすめ!

写真はイメージです
残価設定ローンは、あらかじめ車両本体価格の一部を最終回の支払い分として据え置くことにより、毎月の支払額を軽減できる自動車ローンです。最終回の支払い時に、新車への乗り換えや返却を選択した場合、基本的に据え置いた金額の支払いは発生しません。
そのため、「毎月の支払い負担を抑えて車に乗りたい」「定期的に新車に乗り換えたい」と考える方などに適しています。
トヨタの残価設定型クレジット(残価設定ローン)は、契約時の利便性や一部繰上返済が可能な点が特徴です。
車の注文手続きと同時に、残価設定型クレジット(残価設定ローン)の審査や契約手続きが行えるため、手間がかかりません。また、再分割契約を除く新規契約について一部繰上返済(金額変更)が可能です。ボーナスや臨時収入で余裕がある月には、契約時に設定した毎月の支払額を上回る返済ができます。その後に支払う額を軽減できる点は、大きなメリットとなるでしょう。
  • 繰上返済はあくまで返済額の変更のみとなり、契約期間の短縮はできません。
また、トヨタでは「通常の分割払い」、2回払いの「残額据置き払い」も利用が可能です。自分に合う自動車ローンを知りたい方は、「トヨタの自動車クレジット診断」をお試しください。

残価設定ローン(残クレ)に関するよくある質問

残価設定ローン(残クレ)を利用するデメリットは?

残価設定ローンを利用するデメリットの1つは、金利(分割払手数料)の負担が大きくなることです。残価設定ローンでは、据え置いた残価にも金利(分割払手数料)がかかることから、結果的に通常の分割払いよりも金利(分割払手数料)の負担が増えてしまうケースがあります。
また、走行距離やカスタマイズには制限が設けられていたり、最終回の支払い時に「新車への乗り換え」を選択する場合は同じメーカーの車を選ぶ必要があったりする点もデメリットといえます。
ただし、使用制限については、ほかの方法で購入した車においても売却時にマイナス査定の要因となることがあるため、残価設定ローンに限ったデメリットにはならないでしょう。

残価設定ローン(残クレ)を利用するメリットとは?

残価設定ローンは、毎月の支払い負担を軽減できることが大きなメリットです。車両本体価格から残価として設定する分を除いた金額を分割払いするため、通常の分割払いと比べて、毎月の支払額を抑えられます。
また、最終回の支払い時に新車へ乗り換えることにより、据え置いた金額の支払いは基本的に発生しないため、まとまった資金を必要とせず、数年ごとに新車に乗り換えられる点もメリットといえます。
■監修者
ファイナンシャルプランナー
金子賢司
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)に10年間勤務する中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。
<保有資格>CFP